A.I.を見る。

A.I. [DVD]

これも課題で見ろって言われた映画。思えば公開当時は高校2年で先行上映に家の近くの映画館に友達と行ったにも関わらず人いっぱいで見られなかった記憶がある。そんなこんなで見るタイミングを逃していた映画。

いろいろと口コミ情報が僕のところに舞い込むのだけれど、A.I.ほどクソな評価が舞い込んできた映画はないんじゃないかと思う。それだけに、あぁ見なくてよかったという気持ちと、どんだけ酷いんだといういわゆるとんでもないブスを見かけるとつい凝視してしまうようなそんな好奇心とも怖いもの見たさとも言えるような心理状態に陥ったものだ。

で、見てみると、まぁ人が言うほど悪くはないけど、つきつめて見る人にはこの中途半端さ加減が許せないんだろうなぁと思った。A.I.をボロクソに言う人と宇宙戦争をぶったたく人の層は絶対かぶってると思うんだけどどうだろう。僕の周りではだいたい一致するのだけれど。

宇宙戦争をなんで比較の対象にあげたかというと、オチの突然さが宇宙戦争とAIのそれは非常によく似ているからだ。宇宙戦争ではトライポッドが突如倒れだすし、AIだと突如2000年後に話が飛ぶ。なんの前フリもなくね。

A.I.はそういやもともとはスタンリー・キューブリックのアイディアを元に作っているんだった。キューブリックならどう作っていたんだろう。主人公のデイビッドがラスト近くで目覚めた後に気付いたら自分の部屋と思しき部屋に移動していたシーンのナゾ加減がキューブリックっぽいなぁなんて余計なことを考えたけど、この映画にキューブリックっぽさは微塵もないなぁと思う。

ロボットは感情を持てるのか、というキューブリックが作ったテーゼにスピルバーグが親子愛と設定したことについてはスピルバーグの今までを考えれば当然かなぁという気がする。一方で2001年宇宙の旅のHALを思い出すと、HALは死に対して恐れを抱く、つまり感情を持ったロボットだったわけだけど、キューブリックはあれを拡大して描きたかったのかなぁとも思う。これ以上2001年を語ると僕のバカさ加減がバレるのでやめる。(2001年はほめるにもたたくにも中途半端だとバカさ加減がバレてしまうので、気をつけなければならない。)

いろいろんなこと考えてじゃあこの映画どうなのよっていうことに答えてない気がするんだけど、正直これをどう評価していいものか悩む。娯楽映画としては水準以上だと思う。各人物も魅力的だし、アドベンチャラスなシーンも連続するし、相変わらずスピルバーグ印のサスペンスはあるし、となかなか飽きないで楽しんで見ることができる。ただ、おそらくこの映画の評価を下げているのはオチの扱いなんだろうと思う。なんで、宇宙人がいきなり出てくるんだ、と。多くの批判はそこに集約されるんだろうと思う。(なんかエヴァンゲリオン的になるけど、宇宙人というよりデヴィッドの記憶の旅にしたり、宇宙人は出してもいいけど、実体の持たない宇宙人(声だけ聞こえる)との対話、なんて風にしたらそこまでみんなは愕然としなかったと思う。ついでに2000年後なんて具体的な数字も出さないで、気の遠くなるような年月が流れた、みたいな。これって手塚治虫の表現だっけか。まぁいいや。)

デイビッドは最後まで母親と暮らすことを目的としていた。その手段として人間になることを望んでいたわけだけど、それがいつからか人間になることが主目的であるかのような印象をあたえかねないプロット、または、人間でなくても母親と幸せな生活を1日だけでもおくれたというラストによって手段と目的がごちゃごちゃになってしまったのは明らかなマイナスポイント。宇宙人と会った後に本当の人間となって、その後母親が復活すれば丸くおさまったのに、いろんなことが、と思う。(デイビッドがあのままアダムになるという展開もそれはそれで面白い。愛とかそういうの超越した存在にまで昇華して終わる、みたいな。あ、でもそうするとロボットが感情を持てるかというテーゼから外れるか。)

ジョンウィリアムズの音楽はこれまでになく明確な主題があまり見えてこなかった。やっと見えてきたのは最後くらいかな。ただ途中のアクションスコアで打ち込みがでてきたときはまじでびっくりした。いつのまにあんた打ち込みなんて覚えたんだ?でもなかなか巧かったよ。やっぱり基礎がわかってる人はなんでもできるんだなぁと思った。

ということで、A.I.。よくわからん映画。
しかし僕はオチの突然さとかそこまで気にしないので、正直最後は泣いてしまったのでした。


A.I.

映画:★★☆☆☆
音楽:★★★☆☆
オチ:★☆☆☆☆
Over all:★★★★☆