ポセイドンを見る。

Poseidon
うわー映画館で映画見るなんていつ以来だろう。クラッシュ2回目見て以来か。(こういうときブログに記録がつけてあると便利)

なんで映画館行かなかったかっていうとグチと自慢が入り混じったなんの面白みもないエントリになるのでやめとく。

さて、このポセイドンだけど、僕としては2006年度で期待している映画の一つだったりしてました。ま、大穴だけどね。(本命:ミュンヘン 対抗:M:I-3)なんでかっていうと久々のバカパニック巨編だったことと、監督がかのペーターゼンだったこと。

ペーターゼンと言えば一般的にはネバーエンディングストーリーなんでしょうが、僕はあまりにも小さいころに見たので記憶にありません。僕にとって何より彼はエアフォース・ワンの人なんですよ。あのペイトリオティックかつバカバカしい内容に言葉を失う人や苦い顔をする人も多くいるだろうこの映画だけど、僕にとってはすばらしく傑作で、何度見ても飽きないのです。

あれはたしか中1のころで、見に行ったときはあまりの情報量の多さにピンと来なかったんだけど、2回目家でビデオで見返して、この映画はすごいぞ、なんて思ったわけだ。あの緊迫感をかもし出す演出と危機に次ぐ危機の連続技は僕に衝撃を与えるには十分なインパクトがあった。ジェリー・ゴールドスミスの曲もすばらしすぎた。

公開の97年当時はアクション・パニック映画花盛りのころで、ザ・ロックやらインデペンデンス・デイなんかが大ヒットしてもてはやされてた時代だった。僕はもちろんこの時代の映画にとっても影響を受けていて、ザ・ロックなんていまだに僕にとっては最高の映画の一つだったりする。

その後彼はパーフェクト・ストームなんていう凡作(ストーリー構成の失敗作としてよく例にあげさせてもらってます。)を作り上げて僕はほんとゲンナリしてしまった。エアフォース・ワンのペーターゼンはどこへ行ってしまったんだ、と。(トロイなんか見る気も起こらなかった。)

そんなこんなで時代も移り変わり、あの当時の素直な(悪く言うと何も考えないで見られる)アクション・パニック映画は姿を消し、単純なアクションでもなんだか暗いしえげつなくて(24とか)、20代にしてあのころよもう一度、なんて回顧する日々が続いたのであった。(ブラッカイマーがブラックホーク・ダウンなんて作り出したんだからやっぱり時代は変わったんだと思う。)

ペーターゼンの名前も忘れかけてたある日、僕はポセイドンの予告編を見て狂喜した。これは久々にくるぞ、と。9・11の影響を受けてかどうかは知らないけど、最近パニック・ムービーが増えてきたのはたしかで、例えば宇宙戦争なんてのも好例だと思う。ただ宇宙戦争もなにかの暗さをはらんでいて、あのころのようにスカっとするパニック物ではなかった。しかし、ポセイドンの予告は明らかに久々のバカ映画の到来を予感させ、ポセイドン号に迫る大波のごとく僕を飲み込もうとしたのであった。

そして、今日。僕の久々の映画館復帰作がこれになるのもなんとも因果な気がしてならないけど、僕は期待満点で見に行った。もちろん、横目で大人気なダヴィンチ・コードをスルーしてね。


上映開始、5分。早速ペーターゼンは僕の期待に答えてくれた。

「もう波来ちゃうのかよ・・・。」

すばらしい。すばらしすぎる。なんで波が来てるの?っていう疑問を持つことさえ許されないこのスピード。前フリは乗員の「何かいやな予感がしないか?」っていう一言だけ。おまえ、天気予報士になれよ。そこからの地獄絵図は言葉に出来ないほど壮絶で、職人としてのペーターゼンの実力が垣間見られる最高のシーンだった。

なんだかんだで知り合った被害者同士で早速脱出を試みるために行動開始。これまた早い。ほんと、一瞬でも目をつぶってたらストーリーに追いついていなさそうなくらいに早いストーリー展開。なんて切り詰めた構成なんだ!

その後も僕の期待に答えまくってくれて、「早く!!!早くねじあけてよ!!!」なシーンとか「これ絶対あれが落ちてくるよね。」なシーンとか、「早くハッチ開いてよ!」なシーンや、「やっぱり一筋縄では解決しないのね。」なシーンなどなど最高なシーンだらけでうれしくてまじ涙を流しそうになったし、何度も笑ったし、すばらしかった。ただネジのシーンはドライバーを落とした方がもっとよかったと思うよ。

ドラマがないなんて批判が多い今作だけど、これにドラマとかいらないよ。こんなんにドラマがついて妙にテンポダウンなんかしたら構成・ストーリーの荒さがバレてしまうだけなので、この映画のクオリティを下げる要素でしかない。どうも元ネタであるところのポセイドン・アドベンチャーと比較してそんな批判をしてるけど、監督も言ってる通り、ただ船が転覆してるっていう設定だけもらっただけなんだって。

もちろん不満がないわけでもなくって、もう一押し!なシーンも何個かあったし、最後も船から出た後もう2個くらい危機があると僕はおなか一杯になってたと思う。エアフォース・ワンなんかおなか一杯になるどころじゃなかった気がする。ただ、このご時勢ではほんとによくやってくれたと思う。

クラウス・バデルトの音楽は映像をそこそこ盛り上げる音楽だったけど、相変わらずわかりにくいメインテーマで残念だった。この映画にどんなテーマが必要なのかなぁって考えたみたけど、やっぱりこういうバカ映画にはヒロイックなテーマが必要なんだと思う。危機を何度も迎えてそれを克服していく主人公達に我々観客は感情移入するし、だからこそ彼らを応援してそして克服した暁にはよかったーって思うわけだけど、そんな観客の安心した気持ちというか、よくやったよカート・ラッセル!!っていう気持ちを盛り上げるにはヒロイックなテーマが最適なんだろうと思う。やっぱりハリソン・フォードをあれだけ応援できたのはジェリー・ゴールドスミスのすばらしすぎるヒロイックなテーマがあったからなんじゃないかなと思うわけだ。

ただ、さっき9・11の話をちょろっと出したけど、あれ以降、いやその前から少し兆候はあったかもだけど、何かしらの危機を迎えたときに主人公が超かっこよくて力強くて苦労しながら命の危機を何度も迎えながら克服しちゃうなんていう映画が減ってきてて、向かってくる危機に対して人間は無力でしかなくて逃げるしかない、なんていう後ろ向きっていうか危機に対して消極的に対処する映画が増えてきた。そんな流れの中ではヒロイックなテーマよりも危機への恐れだとか危機自体の力だとかっていうのを具現化したテーマ曲の方があってしまうんじゃないかなと思う。

宇宙戦争なんかもその典型で、主人公達はひたすら逃げるだけのストイックな映画で、甘い人間ドラマもなければ、宇宙人が倒れた後の爽快感もなく、残るのはただ虚しさだけっていう映画だった。そこらへんの違和感、特に娯楽の大王のスピルバーグがそんなん作ったっていうのがあの映画の評価を不当に下げている原因なんじゃないかと思うわけで、このポセイドンももちろんバカな要素は持ち合わせているけれど、なんかやっぱり宇宙戦争と共通する部分もあったりして、これが時代の流れなのかなぁと思った。ジョン・ウィリアムズも先で言った曲のタイプで言うと前者の危機への恐れをメインテーマにしていて、ETとかを思い浮かべながら聴くと同じ人かよって思うくらいに夢も希望も感じさせない救いようのない曲を書いていた。(彼の作ったタワーリング・インフェルノや元ネタであるポセイドン・アドベンチャーで言うと、前者はなんだか明るいテーマだし、後者はたしかに脅威をテーマにしてる気がするけど救いようがないまで暗くない。音楽聴いただけだから詳しいところまではわからんけど。)

ポセイドンではもちろんカート・ラッセルとかヒーローはちゃんといるんだけど根本的な問題は誰も解決してないし、ドラマもなく人々がどんどん死んでいく。9・11までのアクション・パニック映画って死ぬっていう瞬間が一つの大事な瞬間であったりして、そこにたっぷりとお涙頂戴演出を仕掛けてくるのが常套手段だった。(アルマゲドンしかり、インデペンデンス・デイしかり。)そこらへんのある種の冷徹さっていうのは、やっぱり誰もが対抗することが出来ずにあのビルが崩れ去るを見ることしかできなかった経験が響いてるのかなぁ、なんてよく聞かれる面白みのない仮設を立ててみたりして。

見ててなんか物足りないな、って思ったのはやっぱりもっと人が死ぬときには大げさにやってほしかったっていうあたりなのかなぁ。でもエアフォース・ワンは特に人が死んで感動とかなかったからいらない要素である気もするんだけど。あとはせっかくの要素を生かしきれてなかったとこがあって、ネタバレになるからあんまり詳しくは書かないけど、あの死んでしまった船員とジジイと女の関係をさりげない一言で描けたんじゃないかなと。せっかくジジイはその船員の名前を聞いてたわけだし。女が船に乗る理由を話しているときにさりげなく彼の名前を言ってジジイがもしかして!?と気付けばその後彼女を助けたり、彼女があーなった時もシーンとして生きてくるんだろうと思う。ちょっともったないかな。そう時間の要する話でもないし。

そうそう、一瞬ふっと笑ってしまったことがあって、カート・ラッセルの役どころが元消防士・市長だったこと。ピンとくるひとはくるだろうけど、カート・ラッセルと言えばバックドラフトなわけで彼は主人公の消防士を演じていたわけですよ。そんなつながりに少しニヤリ。たぶん本編中に扉を開けてフラッシュファイアでよかった、っていうくだりはつまりは「バックドラフト現象が起きなくてよかった。」ということであって、ここらへんもニヤりとさせてくれる要素でした。


ってーか見ないうちにカート・ラッセル老けたよなぁ・・・・。


「ポセイドン」
映画:★★★☆☆
音楽:★★★☆☆
期待にこたえてくれた度:★★★★☆
Over all:★★★+(0.5)☆