2009年を振り返る。

・・・ってもう2010年じゃねぇか!そう、気づけば2010年もすでに1週間が経過しているのです。早いですね。皆様明けましておめでとうございます。

毎年、年末にはその年を振り返る日記を書いているものなのですが、今年、あ、いや、去年はそれをかけなかったのです。理由の1つはアバターでした。

アバターを年末に見る予定がなかなかつかず、また川崎のIMAXが異様に混雑していたこともあって、結局年内には行けなかった。アバターIMAXで見ようと決めていたので、いい席が取れるようになるまで、とりあえず待とうと。で、ジェームズ・キャメロンの12年ぶりの新作を見ずして2009年を語れない、と思ったわけです。

アバターを全体として見ると、あんなに長くする必要ないんじゃないのってくらい無駄なシーンがたくさんあって、途中は正直いいかげんにしろよと思ってました。話もえらく古典的で何回この話って映画化されたっけ、みたいな。てかポカホンタス!!!てな具合で筋としては特に褒められたもんじゃありませんでした。3D自体は特に革新的な映像というわけでもなく、個人的には「こんなもんだろう」というかんじでした。むかーしに見たディズニーのチキンリトル(映画館での3D初体験)とそこまで大きな技術的な差を感じなかったなぁ。まぁ、チキンリトルはオールCGなので今回の実写混じりと比べちゃあいけないのかもしれないけど。

でも、個人的に、アバターは2009年ナンバーワンでございました。言うなれば80年代〜90年代前半にもてはやさせた人たちの逆襲。やっぱり「わかってる人」が作るとこれだけ違うものが出来上がるんだと感慨深かったです。ジェームズ・キャメロンは年をとってもジェームズ・キャメロンだったよ。トランスフォーマーが期待はずれだった分、その不満はすべてアバターが解消してくれました。

不満だらけなのにナンバーワンなのはなんでかって、僕はそもそも最後に展開されるであろう「大バトルシーン」にしか最初っから興味がなかったからなんですけどね。

現代兵器がミサイルぶっ飛ばすだけなのにあんなに燃えるとは思わなかった。キャメロンは盛り上げ方がやっぱりうまい。ヒッチコックの有名な「爆弾の爆発のさせ方の違い」じゃないけど、ミサイル一発ブチかますにもやっぱりしっかりとした演出(段取り)が必要なんだなぁと思った。最近の映画監督はこういうところがわかってないから困る。爆発させりゃあいいってもんじゃあないんだよ。(特にマイケル・ベイとか)
加えて最高なのが悪役の尋常ないくらいの粘り。なんつーベタな悪役だよっていうくらいなベッタベタな悪役が出てくるんですが、そいつとのバトルシーンに久々に感じる「これだこれだ!!」感があってやばかったです。最後の最後、飛行機墜落→悪役死亡で終わらせるかと思いきや、パワードスーツみたいなのに乗り換えてなんと生き残る。しかも最後主人公とのバトルシーンで意味もなくパワードスーツの前面防護ガラスを吹き飛ばす!!!ここで僕は

「きたーーーーーーーーーーーーーー!!!」

嬉しすぎて興奮のあまり劇場で大爆笑!!なんと無意味な本気見せの演出!でも、主役連中よりもこの悪役はキャラが立っているおかげで「怒りに任せればこんな無駄なこともやりかねんな、こいつは。」と思わせてしまうキャメロンの演出もまたすごいわけで、これを見て「ついにこいつは本気になった。」ってのが伝わるんですよ。
そしてこいつはまた中々死なない。あの手この手で生き長らえようとする。というよりあの手この手で主人公を殺そうとする。もはや当初の目的全部忘れてるよこいつ。なんだけどそれもまた説得力がある(ような気がする)。この粘り。最近の映画に出てくる悪役は粘りがなさすぎる。もしくは危機的状況から抜け出すのが早すぎ。と、いうより最近の映画のクリエイター達が「あれでもかこれでもか」の反撃手段(もしくは連鎖的に発生する危機的状況)を考えられないからなんだろうけどね。最後は粘って粘ってようやくそこから抜け出せるからこそカタルシスがあるわけですよ。スター・トレックなんかはそれ不満過ぎて個人的にはナンバーワンになれませんでした。あとトランスフォーマーもザ・フォールンが早く死にすぎ。(トランスフォーマーの場合は制作陣にインテリジェンスが欠如してるのでおそらく「あれでもかこれでもか」の展開が考えつかなかっただけなんだけど。)

それにハン・ソロばりにいいところで加勢しにくるミシェル・ロドリゲスも最高。(というかあれハン・ソロだろ。)ただ、ミシェル・ロドリゲスはあまりキャラが描かれないのでいまいち主人公に加勢する動機が分からないのでそこまで燃えませんでしたが、キャメロンが大好きな典型的な強い女のミシェル・ロドリゲスがかっこよすぎたのでよしとします。(ハン・ソロは直前に思い悩んでいたからこそあのシーンで燃える。)

で、なにより嬉しかったのはジェームズ・ホーナーの復活。最近は大作に起用されることもなくなり、派手路線は鳴りを潜めていたんですが、この何年ぶりかという活躍の場に今までの鬱憤をすべてぶつけたんじゃねねぇかという会心の出来!
オープニングでいきなり「パラララー」というあの気の抜けたいつものトランペットが聞こえてきたときは「またか・・・」と嫌な予感が一瞬したのですが、アディエマスかよというジェイクとネイティリの交流の曲とか聞いていてシーンの美しさもあって非常に心地がよかった。それにホーナーは基本に忠実な人ということもあり、主題曲を何度も繰り返してくれるのでしっかりと耳に残ります。そして最大のヒットは最後の大バトルにつけられた曲!!これがもう、僕にとっては2009年のベストキュー。激燃え。ジアッチーノとかどっか行けレベル。ジャブロンスキーなんて論外。
僕にとってホーナーは「気の抜けたふにゃっとした高音中心のオーケストレーションをする人」で、正直、苦手な作曲家でした。というのもホーナーを聞いていたのがちょうど90年代末のころだったからです。エイリアン2やクルール、コマンドーなんていうホーナーのド派手路線をあまり知らずにアポロ13やパーフェクトストームなんてのを聞いていました。メロディーは大好きだし、楽器のバランスも好きだけど、どうもなんかなよっとしてえ「パンチ」がないなぁ、、、と。だからこそ、今回のパンチのきいたド派手なオーケストラに心底驚いてしまったのです。それに打ち込みのパーカッションが大活躍するおかげで曲全体が「キュッと締まった」結果、ホーナーの苦手な部分が全て無くなっていて大感激でした。やっとやってくれたね!ホーナー!!みたいなかんじ。このままだとファンになりそう。また、さすがやっぱりホーナーはベテランだなと感心したのですが、派手なアクションスコアが「うるさすぎない」んですよ。最近の作曲家は派手にするとうるさすぎて、うるさすぎないと今度はおとなしい曲になったりと、派手でありながらうるさくない曲を作れる作曲家が減ってきているのですが、さすがベテランとも言うべきデキではないかと思います。(うるさすぎると映画の効果音とバッティングするので望ましくない。)
それだけじゃなく、今回の特筆すべきポイントはアクションスコアにドラマを感じられるところ。ジェイクはじめナヴィ一族の決意や勇気、思いがアクションスコアから伝わってくる。本来的には劇伴はドラマの補助なのでドラマを感じられて当然なのですが、ハラハラを助長するくらいしかできなくて、それぞれの思いが伝わってくるアクションスコアというのは実はあまりないのです。人間側とナヴィ側が交互に描かれる出撃シーンは感情が伝わってきてそれだけで燃えてくる素晴らしいスコアリングでした。(ちなみに、サントラでいうと12曲目にジマーのグラディエーターにそっくりな曲があったのですが、あれはお得意のパクリというやつでしょうか。コーラスの入り方とかパーカッションとかそっくり。)

いろいろ問題点はある映画だとは思いますが、しかし基本がしっかりと出来ているスタッフの力が集まるとかくも凄まじきと感服致しました。マイケル・ベイやJ.Jエイブラムスはいつまでたってもキャメロンには追いつけないだろうし、ジャブロンスキーは絶対にホーナーにはなれないのです。いやーすごかった。今度は2Dで見てこようかなぁ。絶対もういっかい劇場に行こう。

・・・で何時の間にやらアバターのレビューになってますが、本来の目的は2009年の振り返り。

・007/慰めの報酬
2009年の幕開けは007でした。既に遠い記憶になっているのですが、一言で言えば「なんだか急いでいる」映画でした。アクションシーンのねじ込み方がなんだか無理しているような、、、全てが駆け足で多くの要素を詰め込もうと思ってなんだか破綻しちゃったような、そんな記憶があります。まぁカジノ・ロワイヤルのデキが素晴らしかったので、それと比べてしまうとどうも、、、というところで個人的にはイマイチ。

マンマ・ミーア!
ABBAだらけ。ミュージカルはイギリス産よりもアメリカ産派な僕としてはいまいちでした。ABBAの楽曲と相変わらず全てが上手い/巧いメリル・ストリープは素晴らしかったけどね。

ハイスクール・ミュージカル/ザ・ムービー
ザ・頭からっぽムービー。みんながまっすぐ過ぎて見てるこっちが気恥ずかしくなります。が、生まれ変わったらあれだけ頭からっぽな人生も歩んでみたいな、と思いました。曲とダンスシーンに救われてる。というか、曲の良さを抜いてしまうと何も見どころがない。ただいまどきのミュージカルで正統派な群集ダンスを見せてくれるものは少ないのでそういう意味ではは貴重。これだけ言っておいて、実は結構気に入ってたりする。This is itオルテガが監督なんだよね、よく考えたら。映画監督するのはやめた方がいいよ、オルテガ

ワルキューレ
非常に惜しい映画。トム・クルーズも頑張ってるし、いくつかの重要なシーンではサスペンス演出も成功しているのに、しかしあと一歩。なんでかって、この作戦は失敗するのを観客はみんな知っているのに「失敗しました」を映画のオチにしちゃったから。だから有名な史実を映画にするのは難しい。

ウォッチメン
いちいち映像が懲りすぎ&示唆の入れ方が明らさますぎて嫌らしい。300でもそうだったけど、僕にはこの手の映画は合わないみたい。

・ザ・バンク 堕ちた巨像
退屈。シナリオもありがちで工夫がなく、アクションシーンのキレも全くない。じゃあ題材で魅せるかっていうと、社会派になりそうな題材を選んだ割りにはそれほど突っ込まないしで全体的に中途半端。2009年で見に行って最も損をしたと思った映画の一つ。

天使と悪魔
前にも書いた通り最悪。優れた原作があるのにどうしてこうもつまらなくできるのだろうか。とりあえずロン・ハワードは評判を落とす前にサスペンス、アクションモノから引退してドラマに専念した方がいいよ。ハンス・ジマーの音楽もなんだか空虚に響く。

スター・トレック
惜しくも今年2位。優等生な作品であり、これを嫌う人はほとんどいないと思うが、やはり中盤以降の失速はいただけない。地球に打ち込まれる赤色物質の阻止が早すぎるでしょ、いくらなんでも。終盤の見せ場にも関わらずあれだけさらっと終わらせるのが理解できません。だからエイブラムスはまだ一流じゃない。企画は巧いけど、さ。ジアッチーノの音楽はメインテーマとメインテーマの派生はとても素晴らしかった。あと新旧テーマ曲が入り乱れるエンドクレジットは出色のデキ。オーケストレーションもオーケストラの醍醐味を感じることができてよかった。でもメインテーマ以外何か覚えてる?と言われると覚えてない。そして相変わらずのアクションスコアのキレの悪さに閉口。M:I:3も最悪だったし、アクションスコアがもうちょっと巧くなると素晴らしい作曲家になると思うのだが。

ターミネーター4
ただ派手なだけ。それだけ。

トランスフォーマー/リベンジ
ただ派手なだけパート2。期待がはずれてしまった僕の残念な気持ちったら表現できませんわ。ただ、Blu-rayで見返したらバトルシーンは第一印象よりはひどくなかった。ジャブロンスキーのスコアは全く褒められるところがない。ひどい。いい加減にしてほしい。音楽は鳴ってればいいってもんじゃないんだから。頼むから3作目はもうちょっとスピルバーグの意見も聞いて堅実な作品作りを目指してくださいね、マイケル・ベイ

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破
もはや評価不能。TV版のエヴァを伏線としても、物語の補完としても活用しきった表現にはもはや脱帽。それでこそ「新劇場版」とした意味がある。作品としても素晴らしいなんていう陳腐な言葉では表現できないほど「凄まじい」デキで、おそらくこの映画後世に語り継がれる永遠の名作だと思う。ちなみに劇場では終わった瞬間に拍手が起こりました。純粋な映画で拍手が起こったのは今まで3回しかない。スター・ウォーズEP1でメインテーマがかかった瞬間(これはお祭りのようなものだったからな)とダークナイトでドーンってエンドタイトルが出た瞬間、とこれ。デキに感動して拍手が起こったのはダークナイトエヴァだけでしょうな。この二つには納得。本来的には1位とすべきなんでしょうけど、1位なんていうのもおこがましいくらいのデキだったので、あえてランク外にしております。

・G.I.ジョー
ただ派手なだけパート3。俺も好きだなこの手の映画。ソマーズはバカな映画作らせると天才ですが、これもまさに。ただパリの大乱闘は正直トランスフォーマーのフォロワーでしかなかったよ、ソマーズ。シルベストリは久々に盛大に鳴らしてくれたのでうれしいことはうれしかったのですが、ただちょっとメインテーマが弱いんだなぁ、、、そこだけが残念。ただアバターでもホーナーはさすがベテランと書きましたが、シルベストリもやはりベテランで、パリの大乱闘のシーンのスコアリングは素晴らしかった。音楽がかかるだけで燃えたもんなぁ。

・96時間
手堅くまとめた一本。このご時世によくもまぁここまでシンプルなもん作る勇気あるねぇあんた、と言いたくなるような映画。でも、逆にこのご時世だからこそシンプルさが新鮮だった。何回も見たい映画ではないけど、暇つぶしとしては十分。

・サブウェイ123 激突
劇場で何度笑ったかわからない。最近のトニー・スコットはお決まりの映像表現しかしないので、ところどころ予想できちゃうのね。カメラがゆれて早送りとスローモーションの混在の中、フラッシュとか色のチラツキを加味。これであなたもトニー・スコット!・・・クリムゾン・タイドとか昔はいい映画撮ってたんだけどねぇ。まぁでもさすがはベテランで、水準並の作品ではありましたよ。

マイケル・ジャクソン THIS IS IT
マイケル・ジャクソンについて書くと物凄い量になるので書きませんが、僕にとってこの映画は複雑でした。BADのツアーが僕にとってのマイケル・ジャクソンなのですが、やはりそれに比べると衰えも感じる上、リハーサルということもあり、本気で演じてないので、んー・・・というかんじでした。ファンにとって貴重な映像であるのは間違いないし、楽しめたし、興奮もしたのですが、でも見ない方がよかったのかなぁとも思う。マイケル・ジャクソンの負の側面も描くべきとどこかの超なんたらの評論家(きどり)が書いてましたが、なんと的外れな指摘で苦笑いでした。だって、この映画のコンセプトはマイケル・ジャクソンの人間を描くことではなく、やるはずだったコンサートを有り物の映像で再現することなんだから、さ。コンサートでマイケル・ジャクソンの人間なんて描きますか?今年は少しマシなレビューを期待します。(期待してないけど。)

・2012
エメリッヒもついにネタ切れかと見てて残念な気持ちになってしまった。危機一髪!なシーンがアイディアとしてほぼインデペンデンスデイと変わらないんだもの。「嵐or地割れが飛行機に迫ってきてギリギリで離陸」ネタを何回やればいいのさ。てか同じネタをインデペンデンスデイでもエアフォースワンの離陸シーンでやってたじぇねーか!!これでパニックは引退するとかエメリッヒは言ってるみたいだけど、確かにもう引退した方がいいよ。でも、あんた、パニック以外撮れないだろ。(パトリオットは非常に平凡な作品でした。)

アバター
上記の通り、今年一番。

順位的には、、、
1位 アバター
2位 スター・トレック
3位 This is it
ほか
と、なります。
2009年はぱっとしなかったなぁ。ただ、アカデミーとったわりに公開劇場が少なかったスラムドッグ・ミリオネアをおかげで見逃してたり、グラン・トリノチェンジリングを相変わらずの「イーストウッドへの苦手意識」から見るのをためらってたりするので、それらをしっかり見てればまたランキングは変動するんでしょうけどね。

というわけで、2010年、素晴らしい映画がたくさんあらわれることを期待して、このエントリを閉めたいと思います。