「Ray」を見る。

ああああ。一人ぼっち感最高な今日この頃。なんていうか俺の生き方としては、まるでやどかりのようでして、小学校なら小学校、そしてその宿を捨て、次は中学校、のようなかんじなのですが、ついには中高のころにはそのサイクルがクラス単位にまで短くなりまして、今に至るわけです。

たぶん俺に根気がないんでしょうけど、一定の期間同じ宿にいると飽きてきて捨てたくなるんですね。で、疎まれる行動して去っていく、、、うはー、よくねえこういうの。と言いつつ今してるし、みたいな。でもなんか黙って捨てないあたり俺もさびしいんでしょうか。よくわかんねえや。


そんなこと思ってた日に見たRay(レイ)。なんだかややこしくなりそうな気がするのでレイ・チャールズの半生について思ったことと、映画について思ったことを分けて書こうかと思う。


まず前者。

レイ・チャールズって人は結局人を信じなかったんでしょうか。この映画の描き方だとそう見えました。盲目ゆえに騙されたり、利用され続けた人生。そりゃ疑わずにはやってられまへんな。とっかえひっかえ女を連れ込んでたのもやはり人を信じられなかったからか。この映画はひたすら事実(疑わしいけど)を淡々と語っていくだけでぜんぜん心理描写がなかったのでそこらへんはわかりませんが。一方で、過去にずっととらわれながらドラッグに溺れる日々。人を信じられなかったり、女に軽いヤツってやっぱ心のそこではさびしいんでしょうなぁ。あ、、、俺のこと?げふんげふん。女には軽くないですから。安住できる地をなかなか見つけられなかった点は、俺と同じだ。


で、後者。実際映画としてどうなのよ?って話。


映画としてRayはどうか。はっきり言います。水準以下でしょこれ。ジェイミー・フォックスレイ・チャールズがまじ乗り移ったんじゃないかとしか思えない素晴らしすぎる演技力(モノマネ力?)とレイ・チャールズの名曲の数々がなければこれただのクソ映画ですよ。前者の方にちらっと書きましたが、描き方が薄すぎる。心理描写とかぜんぜんないし、そんな事実列挙されても彼の本を読めばわかることだし、この映画でいったい何をやりたかったのかが不明。こんなんアンビリーバボーでもできるし。以前このブログで取り上げたアビエイターなんかはハワード・ヒューズの内面をえぐりとってましたが、あれくらいはやってほしい。淡々と話を進ませるあたりは共通してますけどね。

そしてさらに致命的なのは、史実・伝記モノの悪い点が全部出ちゃってるとこ。事実、なわけですから、どうオチを付けるのかが最大の悩みどころになる。たとえばタイタニック。厳密に言えば史実じゃありませんが、あれは巧くやってた例の一つ。というのもローズの現代からの回想という構図をとったからです。あれが“当時”のまま終わってたらきっと中途半端な印象になってましたが、老婆の思い出話としたことで巧く終われたわけです。そしてアビエイター。これは彼の幼いころからの呪縛をメインテーマに据えていました。このテーマが一貫して描かれていたからあの終わりが生きてくる。

話を戻して今回のRay。

まず、構成。ただひたすら人生を追うだけ。たまに回想シーンがあるものの、特に現在とのつながりが見えない。つまり回想する必然性が全くないから観客としてどうしたらいいのかわかんない。アビエイターと真逆。

次、メインテーマ。これまたよくわからん。1.黒人として差別されることなのか、2.盲人として騙され続けたことなのか、3.幼いころのトラウマなのか、4.人生の平穏なのか。終わり方を見る限りでは1か3が有力なんですがそれはただの推測で定かではなく。推論、ではなく推測。つまりそうだと言い切れるだけの証拠がない。

ただあの切り方<ジョージア州からの追放が解かれる>は1をメインテーマに据えていたほうがきっと感動したんでしょうけど、製作者として他に言いたいことがあったらしい。まぁレイ・チャールズの半生を黒人差別反対でくくるのもおかしいと思うので正解でしょう。だったらあの終わりにするのは間違い。とにかくこの映画のように人生を追い続けるだけの場合、なんらかのメインテーマがあって、それの解決を以って終わらす以外に道はないわけです。ところが、どれもメインテーマに据えなかったためとんでもなくわけのわからない印象を与えてしまった、という結果に・・・・・いろいろやりたいことがありすぎて結局どれも中途半端になってしまったというのが正しい解釈かな。監督も脚本もある特定の部分にフォーカスを当てられなかったってことで力量不足でしょう。やはりそこはスコセッシとの差か。

と、いうことで、レイ・チャールズに思い入れがある人とか以外は見るだけ無駄。そんな時間があるならレイ・チャールズのCD借りて彼の才能に溺れてみてください。きっとその方がいい経験になる。つか、ぶっちゃけそれってこの映画見るのとそう大差なくて、実はこの映画はただのPVだったんじゃないかって説もあります。PVにしては余計な話多いんじゃないんですかね?

(今回から点数化することにしました。)
『Ray』

見せ方:★☆☆☆☆
PV:★★★☆☆
ジェイミー・フォックス:★★★★★
Over all:★★☆☆☆