「キング・コング」を見る。

映画『キング・コング』オリジナル・サウンドトラック

今年の大本命、キング・コングピーター・ジャクソン監督なのでめっさ期待してましたよ。この人、ほんと丁寧だから撮るの。

ただ、大本命といわれつつも、かなり不穏なうわさもちらほらと。当初の音楽担当はロード・オブ・ザ・リングでもジャクソンと一緒にやったハワード・ショアだったんだけれども、公開直前で急遽降板。なぜこれが不穏かというと、作品が不出来だった場合、音楽の責任にされてしまう可能性が高いから、である。というよりも、簡単に差し替えられる(と思われているけど実際はそうじゃない。)のは音楽しか変えられる要素がないという事情があるんだと思う。(俳優変えるとか脚本変えるとか公開直前じゃできないからね。)

また、この事件と合わせて、今回の映画の編集権を監督が持っているらしく、映画の内容についてスタジオ側が口を挟めないというウワサも語られました。このことがなおさらキング・コング駄作説を加速させた。(つまり、映画本編に介入できないから音楽担当を変えるしかなかったのではないか、ということ。)

つーことで期待半分・不安半分で見に行った今作。


いや、いいですよこれ!!


ということで、期待通りかまたはそれ以上だ。

最初の導入部以外、ずっっっっとアクションシーンの連続。まさかここまで怒涛の連続技をくらうとは思ってもみなかった。しかも全編ロード・オブ・ザ・リング並みのダイナミズムあふれるシーンばかり。途中の恐竜に追いかけられるシーンは俺でさえ度肝を抜かれましたよ。

また、ロード・オブ・ザ・リングばりの壮大なカメラワークも何度も見せてくれて大満足。あのカットはこの監督じゃなきゃできないよほんと。キングダム・オブ・ヘブンやトロイなんかでもマネされてましたけど、本家は違う。加えてあれだけカメラが動いているのにも関わらず、「見せたい主体」をぶれさせなかったのはさすが。見習え、ルーカス。

映画として考えてもすばらしい。3時間強ある上映時間がまったく苦にならない構成が秀逸。ロード・オブ・ザ・リングは何回眠くなったかわからんけど、これは全くない。

そして、CGキャラに感情移入するなんて思ってもみなかった。あの切ないコングの顔、、、忘れられん。セリフなしでもここまでできるんだ。誰だ言葉で全部説明しようとするアホは。映像だからこその強みを完全に生かしきってる。何度涙したかわからん、見てて。あぁコング、君は真の男だ。君の生き様はかっこよすぎるよ。

ここまで言ってきてなんだけども、ここで浮かぶ疑問は「果たしてロード・オブ・ザ・リングから脱却できていたのか?」ということ。結局その繰り返しだったんじゃないのか?という疑問。

めっちゃ話変わるけど、今年のM−1で優勝したブラックマヨネーズ。正直、お笑い番組とかはそう見ないのでM−1での2戦でしか判断できない(からもし違ったらごめんなさい、ほんと)けど、あれを見る限りでは将来性は見込めないな、と。というのも1戦目と2戦目、まったく同じ構造で漫才を作っていたから。ぶっちゃけ話題を変えただけにしか見えなかった。一方笑い飯はボケとツッコミが双方入れ替わるという彼らのウリを保ちつつ、今までの彼らから脱却したネタ、特に2戦目のマリリン・モンローの応酬など好例であったと思うが、を披露してくれた。だからネタの完成度という点ではたしかにブラックマヨネーズだったけれども、将来性という点では笑い飯に軍配を上げたい、個人的には。

と、ここで話を戻す。つまり、言いたいのはたしかにピーター・ジャクソンのモチアジはわかったけど、でもキング・コングは正直、ロード・オブ・ザ・リングでしかなかった、ということ。話の内容が変わっただけかな、と。もう少し進化した技を見せてほしかった。冒頭の原住民の攻撃とオークの攻撃に何か違うところがあるなら言ってほしい。谷底のシーンと王の帰還のフロドがオークに捕まるシーンの差を教えてほしい。俺にはわからんかった。

キング・コングの完成度はものすごく高い。だからこそロード・オブ・ザ・リング以上のものを見たかった。それ以上であったらほんとに殿堂入りしてたと思う、自分の中での。というか、俺がここまで求めてる時点で、やはりキング・コングの完成度がものすごく高かったということを示しているわけさ。こんな高いレベルでの批判したことない、最近。


音楽。ジェームズ・ニュートン・ハワードは冒頭の騒動のせいでたったの2週間でスコアを書き上げたらしい。彼は個人的にはアーティストというよりクラフツマンタイプだと思っていて、独創性はないけれど、映画音楽の役割というものを最も理解している人の一人だと思う。メロディメーカーとしての才能が弱いのが大きな弱点か。そしてたまにやっつけ仕事をするので一部ではものすごく評判が悪いのも事実。

そこで、今回のキング・コング。2週間で書き上げたことを考えれば上出来でしょう。つかここまでよくクオリティを持たせたと思う。印象的なメロディは皆無だけど、骸骨島のテーマやアンとコングのテーマなどアイディア(曲想)がとてもわかりやすい。さらに、演出もよくできてた。引き際と押すタイミングがしっかり色分けされていて、不必要なところでは音楽が鳴らず、ここぞ!というところで音楽が鳴る。まったく邪魔をせずそしてドラマを引き立てるスコアだ。よくぞこれを2週間でやった!!

それからハワード・ショアはやはり降りて正解だった。この映画に彼の重たいスコアは合わないでしょう。ロード・オブ・ザ・リングでは、毎回初っ端で流れる指輪のテーマで何度気分が陰鬱になったことか!!ロード・オブ・ザ・リングだからこそあれでよかったもののキング・コングではあれはいらない。ジェームズ・ニュートン・ハワードのような軽快なアドベンチャースコアが最適だと個人的には思う。(ジョン・ウィリアムズでもよかったのでは?アラン・シルベストリだとちょっと明るすぎる。)


つーことでキング・コング。見に行くべし!!

えーっと、映画ランキングどうしよ、、、、


キング・コング
映画:★★★★★
音楽:★★★★☆
コングの切なさ:★★★★★
脱却(進化)度:★☆☆☆☆
Over all:★★★★☆