トリノオリンピック・開会式

dokodaka2006-02-19


今日高校へ、高校の友達と行ってきました。その友達が卒業証明書を欲しいと言ったから付いていっただけなんだけど。

その友達は小学校の塾時代からの付き合いなのでもう10年も超えるような関係で、お互いのいいとこ悪いとこ、そしてお互いの痛いところとか全て知っている人。もちろん、僕と高校時代・中学時代のノリを共有してきた人物なので、当然二人そろえばとたんに二人とも高校生に逆戻り。

僕の高校時代は奇跡と言ってもいいくらいで、すばらしく人に恵まれ、すばらしく環境に恵まれていた。さらに幸せなことには僕もその時自分が幸せな環境にいることに気付いていた。そして毎日が笑いと共に過ぎ去っていった。辛いことも頭を悩ますこともなかった。ただひたすらに毎日が楽しかった。

しかし、僕らはいくつかのことに気付いたのだけれど、それは確実に老いてきてるなということ、そしてもうあの時代は戻ってこないのだなということ。


「あのころは何も考えなくてよかったよなぁ。」
「・・・もう戻ってこないのか。」


という会話がなんとも切なく2月の寒空に響いたのだった。


思えば、前の冬季オリンピックは、ソルトレークでやったやつだけど、僕が高2だった時だった。ちょうど開会式の最中は学校にいて早く見たいなぁなんてそわそわしていたことを思い出す。

ソルトレークの開会式は可もなく不可もなくといった印象で、個人的には最もエキサイティングだったシドニーには遠く及んでいなかった。しかし、今思えばアテネのかっこつけて意味のわからない自己満足的な開会式なんかよりも全然よかった。リーアン・ライムスの主題歌やジョン・ウィリアムズの楽曲も印象的だった。(ジョン・ウィリアムズの曲はロスやアトランタの方がよかったけど)

もちろん遠く及んでいなかったと書いたけれど、ショーとして成り立っていたし、何か目新しいことは特になかったけれど、ツボはおさえていたような気がする。


そして、今回。以前ブログに書いたように、今回の演出担当はシドニーを担当したリック・バーチ。僕の期待はいやおうなくあがっていた。


簡単に今回の開会式を評すると、前半のナンパな面と後半の硬派な面の差がどうも納得いかない。圧倒的に前半の方がエキサイティングでそして何よりクリエイティブだ。

開会式はリズミカルに始まる。最初の火の使い方はどうも最近乱用されてて面白くない。そしてこういうのはイヴ・ペパンにやらせたほうが圧倒的に巧いなぁと思ってしまった。ただ、真ん中のステージの使い方が秀逸。今回見てて思ったのはリック・バーチという人はあれだけの大きな会場の使い方を心得てるなということ。シンクロナイズトスイミングのように人の足のみステージ下から出てきて動くさまは斬新な光景だった。

また、人を合わせてスキーのジャンプを描いたのには圧巻だった。これは発想としてだけではなく途中に照明を落としてそれぞれの人間が持っている明かりを際立たせる演出もすばらしく、音楽の盛り上がりもあり、少し涙が出そうになった。あのシーンはすばらしい。

そして何よりすばらしいのはオリンピックマークの出現のシークエンス。急にシルク・ドゥ・ソレイユっぽくなったなぁなんて思いながら見てたらこうやって5輪を出してくるとは!!これがシドニーの聖火点灯で世界中をひっくり返したリック・バーチの底力なのか。独創的な発想と演出が素晴らしい。完璧すぎる。彼のイマジネーションとクリエイティビティが炸裂している全体の白眉となっているシーンだ。

その後は少し退屈になってしまうのだけれど、これはやはり音楽がリズムカルにならなかったのが原因かなぁと思う。バロックの描き方とかが非常にもっさりしていてそこがつまらなくさせていた。シドニーの場合は開拓の歴史なわけで、そりゃ誰が描いてもエキサイティングだけれど、イタリアの場合は芸術の国なわけでやはりもっさりしてしまうのはしょうがない。でもそこを如何に面白くさせるかが腕の見せ所なんだけど、リック・バーチと言えどそれはなしえなかったか。

オノ・ヨーコが出てきてイマジンに持っていく流れは少し強引だったけど、演出がそこそこ決まっていたのでそれなりに感動的なシーンになっていた。ここはもうその人のセンスというかショーの捉え方というかもはや平和をどう表現するかまで議論が及ぶ気がしなくもないけど、僕だったら、最初の小さなバンド編成でイマジンを歌った後にオーケストラがせりあがってきて音数を徐々に増やしていき、最後は子どもたちを中心とした合唱隊を登場させ、イマジンを大合唱して終わらせる演出にしたと思う。

そして世界が息を呑んで見守っていた聖火点灯。リック・バーチといえばバルセロナシドニーで世界中の度肝を抜いてきた人だ。当然僕もどう点火するのかが気になっていた。フタをあけてみるとオリンピックではたしかに斬新なつけ方だったけれど、アテネパラリンピックでイヴ・ペパンがやった方法と同じなので拍子抜け。トリノのリック・バーチの演出はスタジアム全体が反響して聖火がついたというような演出だったけど、それが果たして聖火の連鎖を引き継いでるのかと言われると少し腑に落ちない面もある。イヴ・ペパンがアテネパラリンピックで見せた演出はスタジアム全体で花火が連鎖していくスタイルだったので、聖火の連鎖が描かれていて好感を持ったんだけれど。


そして3大テナーの一人がでてきてうおおおー!!これからどうなるんだ!花火はどんだけあがるんだ!ってかこの花火ディレクターって明らかにアテネオリピックとかブラヴィッシーモ!の人だよね!!絶対そうだよね!だったらすんげーのが見られるよこれ!!!!なんてこれからの展開に期待してたら



NHK中継きりやがった。



僕の期待はなんとも切なく2月の寒空に消えていったのであった。


トリノオリピック開会式』
ショー:★★★☆☆
前半部:★★★★☆
後半部:★★☆☆☆
独創性:★★★★★
NHK:☆☆☆☆☆
Over all:★★★★☆