ヱヴァンゲリヲン新劇場版・序を見る。

エヴァンゲリオンをリアルタイムで見られた、というのは、
スターウォーズをリアルタイムで見られたことの貴重さとはまた違い、
主人公であるシンジ君の精神状態とシンクロできる、
という唯一無二な体験ができている、という点で、
何にも代えがたい体験なのではないかとつくづく思う。
僕の予備校時代の先生が言っていたことなんだけど、
本当によくできている物語は読むときの自分の成長度合いで、
感想が徐々に変わっていくものなんだってさ。
そう思うと、エヴァンゲリオンというのは、見る時代によって
感想が、思いが徐々に変わっていったものだった。
初めて見たときは中学1年で、結局は小学生の延長線でしかないので、
そのときはなんでシンジ君はこんなに暗いんだと、全くの他人事。
そのわだかまりを抱えたまま成長し、
多感な中2〜高1くらいになるとまた感想は変わり、シンジ君の思いがやっと分かるようになる。
と、同時にあのテレビ版のエンディングの意味もようやく理解できるようになる。*1
で、さらに成長すると、こんなことも考えていたなぁ、と遠い目でエヴァンゲリオンを見ることができる。
なかなかこういう作品ってないと思うんだよね。
アニメとロボット(ほんとはロボットじゃないけど)という形態をとっているから
オタクっぽいと敬遠する気持ちも分かるけど、
でもエヴァンゲリオンの価値ってのはとてつもないと僕は思う。

エヴァンゲリオンのすごいところはこれだけじゃなくて、
活劇モノとして見てもすこぶる面白いところ。
見てた当時はふつーにおもしれーなぁとしか思っていなかったんだけど、
その後いろんな映画を見ていくにつれ、
「やっぱりあれは相当に面白いもんなんだ」と再確認できるくらいに面白い。
未だに僕の記憶の中に鮮明に残っているのがカヲル君VS初号機のシーンで、
第9のかっこよさに身震いした記憶があります。
エヴァといえば個人的には戦闘シーンの矢継ぎ早に出てくる指令と
テンポの良い細かいカットの組み合わせ、それから、独特の日本語フォント、なのかなぁ。
エヴァを見ていると、日本語でも十分に、
英語に頼らずともミリタリー的なかっこよさは演出できるんだ!!と自信が出てくる。


で、今回、ほんとに中学生以来全く見ていなかったんだけど、
久々に映画として新しく作り直したものを見て、
「やっぱりエヴァは面白いわ。よくできてる。」と思った。本当に面白いよこれは。
今回劇場版を見るに際して、テレビ版を見返すということは特にしなかったので、
記憶の糸を手繰り寄せながら見る、という特異な鑑賞体験だった。
こんなシーンあったっけ。。。ん。。。これは新しい曲・・・とか
余計なことを最初のうちは考えていたんだけど、
徐々にどっぷりになり、2戦目の使徒との戦いとか、
ヤシマ作戦直前のトウジたちからのメッセージ届くという新しいシーンで激燃え。
その新シーンだけど、こんなハートに直撃な展開はテレビ版通して一回もなかったと思うので、
庵野監督も年をとって素直になったんだなぁと思ってしまった。

ただ、やっぱりテレビ版のつなぎ合わせがベースなので、どうしても細切れ感は否めなかった。
いや、わからない、もしかしたら僕が勝手にここで第1話、ここで第2話、みたいなかんじで、
記憶を元に話をぶつ切りにしていただけかもしれないけど。
でも、話の展開としては30分のアニメで起承転結見せ場を作りつつ〜、
という作り方をしていたと思うので、
映画として1本につなげてみると、そこらへんが妙なバランス感を保っているがために
映画全体のダイナミズムの欠如に影響を与えている気がしないでもない。

あと、肝心のヤシマ作戦なんだけど、ここすこぶる評判がいいよね。びっくりするくらいに。
ただ、僕としてはいまいち心に響かなくて、ちょいと残念。
僕としてはテレビ版のシンプルな描き方が好みにはまるかもしれない。
でも、最後のコンピューターに頼らないっていう描写は激燃え。
な、だけにもうちょっと時間をかけてやってほしかったなぁ。
ここでスターウォーズを思い出した人は数多いはずで、
スターウォーズみたいに何かに導かれながらっていうんなら分かるんだけど、
今回だとシンジ君がたまたま当たってしまった感じ?に見えたので、そこが残念。
それと、コンピュータをはずしたことについて、
リツコさんあたりが「何をしているの!!」と暴走するシンジを止める描写とかもほしかった。
燃える要素がそろっているだけに後もう一歩感が否めず・・・。

それからねぇ、音楽がちょっといただけなかった。ヒロイックなテーマをかけるのはいいんだけど、
初出動時なんかシンジ君の気持ち的には恐怖とかが勝ってるはずなのに、
そんな明るいヒロイックなテーマははずれすぎでしょう、と苦笑い。
ほかにもチグハグな曲がそこかしらにつけまくられているので、拍子抜けしてしまった。
もちろん、エヴァンゲリオンといえばいい意味でのチグハグさがよかったんであって、
そこは理解しているつもりなんだけどね。

ニヤりとしてしまったのは、「つづく」の文字が出た瞬間の劇場の空気ね。
煙に巻かれて????と劇場のみんなが思っているかんじがとてもよかった。
あの空気があってこそエヴァンゲリオンだぜ!!!

しかし今年は面白い映画がいっぱいだなぁ。まれに見る豊作の年だわ、今年。


ヱヴァンゲリヲン新劇場版・序』
映画:★★★★☆
音楽:★★☆☆☆
懐かしさ:★★★★★
Overall:★★★★☆

*1:このこともあってか映画版よりもテレビ版の方がエヴァンゲリオンの主題を純粋に伝えられていると僕は思うのでテレビ版の終わり方がけっこー好きです。