ターミネーター4を見る。

正確には先週見たんだけども。


やたら騒々しい映画だった…。いや、騒々しい、というのは僕が使う場合、多くの場合は誉め言葉だし、きっと三年前に見ていたら間違いなく歓喜していたはずなんだけど、どうもね。

この感覚は映画版のオペラ座の怪人を見た時の感覚ととてもよく似ている。劇中ずっとフルパワーのオケでびっちりと音が詰まっている映画版のオペラ座は、見ているうちに徐々に“今音楽を聞いている”という知覚が徐々に麻痺してしまうんですよ。だからオケでジャーンとやられても全く反応できない。音は無音があってこそ引き立つものでしょうに、というのは僕がこのブログを始めたばかりのころに書いたことですが、まさにその通り。

ターミネーターもまたしかりで全編ほとんどフルパワーのアクションシーンばかりなので、中盤以降は爆発されても今さら何も感じねーよという結果に。緩急つけないとこういうことになるんだよ、という教科書のような失敗例です。

ただ見方を変えると、一つ一つのアクションシーンを個別に見るならば決して悪くない出来。そう、まさにオペラ座が奇跡のような名曲揃いだったのと同じように。僕自身はターミネーターにそれほど思い入れがないこともあり、まぁそれなりに楽しめたというかんじでしょうか。

ただ、シナリオが明らかに途中から方針転換されてるというのが見え見えで、おかげさまで焦点がぶれぶれな映画になってしまってるのはやはりいただけない。これはジョン・コナーがただの脇役だった方がずっとずっと面白かったはず。爆発に巻き込まれて記憶を失った一人の男の物語でよかったんですよ。それをクリスチャン・ベイルがかき回したばっかりに…。

ところで映画を見ててチラチラとよぎったのがフィリップ・K・ディックの短編。ディックの短編は切れ味鋭い傑作ばかりなのですが、今作とそっくりな短編(にせもの、だったかな)は僕にとってはあらゆる意味で衝撃的でした。たった30ページ程度しかないのにこんな面白い話を書けるんですか!という驚きはもちろん、作品中のオチを含めた数々のアイディアはどれも呆気にとられるくらい無茶苦茶凄くて、読後は今までにないくらいやられた感がありました。(報酬も無茶苦茶面白かったなぁ)ま、これが念頭にあるから、記憶を失った一人の男の物語でいいんじゃないかってことなんだけども。ディックの短編は無駄がないので今作の原作としてはふさわしい気もするし。


…うーん、そう考えるとターミネーター4が凄く中途半端でつまんなく思えてきたぞ…。

しょうがない、ディックでも読むか。