最近のゲーム音楽ってやつ

「DIRGE of CERBERUS-FINAL FANTASYVII-」Original Soundtrack(初回限定盤)
僕がゲームをやらなくなって久しいが、最近ゲームのサントラをたくさん聴く機会があった。僕が最もゲームをやっていたころはゲームにオーケストラサウンドが導入されかかってる時期だった。FFⅧのエンディングでオーケストラサウンドが出てきたときには心底びっくりしたものだった。

しかし、それはムービーシーンだけ。ゲーム時の曲はやはりゲームの曲であった。ゲーム機の性能とか予算の問題とかあってかオーケストラの持つ重層的なサウンドを表現するには至っていなかった。

そして10年弱が過ぎた。

今日、なにげなくゲームのサントラを手に取り聴いてみる。


言葉がでなかった。


いつのまにこんなに進化したんだ!?たしかに音は打ち込みだからチープであるもののその再現性やなにより技術力の高さに舌を巻いてしまった。もちろんハリウッドの巨匠陣には遠く及ばないが、しかし日本映画くらいならもうちょっとで到達できるレベルだ。(もちろんクソなサウンドを未だに鳴らし続ける方もいるけれど。)

エースコンバット5なんかは、全盛期のハンス・ジマーやベイジル・ポリュドゥリスの影響を見て取れて、聴いていて非常に面白かった。

特に優れているのは濱渦正志濱渦正志−Wikipedia)だ。

彼はスクウェア・エニックスの社員のようだが、彼のサウンドが最も優れていると僕は感じた。すぎやまこういちのような元々ゲーム音楽が専門でなかった人は別として、ファイナル・ファンタジー植松伸夫のメロディセンスには少し劣るものの、音楽を組み立てる技術は確実には濱渦の方が圧倒的に上である。

ゲーム音楽界では巨匠扱いのクロノ・トリガー光田康典もメロディセンスは日本の作曲家の中でもピカイチだと個人的には思うが、しかし音の構成力がまだまだである。ゼノサーガの音なんかはよくもまぁこんなサウンドでロンドンシンフォニーが怒らずに演奏してくれたなと思うほどのデキだし、ちょこっと80年代のゴールドスミスっぽい音がでてきたりして、彼の個性も全くなく、とても落胆したものだった。

まず濱渦のアンリミテッド・サガを聞いただけれど、ゲームにおいてモチーフを生かしていることにまずびっくりした。一つの曲をアレンジして何度も登場させて世界観に統一性を持たせるという考え自体がゲームにはなかったからである。メインテーマのオーケストラヴァージョンもなかなかいい。もしかしたらこれって別にオーケストレイターもしくはオーケストラアレンジャーがついてるんだろうか。それだったらちょっと残念だけど。よく聴いてみると音のレイヤーが単純なのでオーケストラアレンジャーは別かもしれない。

一番びっくりしたのは最近発売されたDirge of Cerberus FFⅦダージュ・オブ・ケルベロス)だ。これは確実に濱渦の手によるものだ(と思う)。ハリウッドのオケスコアに匹敵するデキ(言い過ぎかも)に耳を疑った。たしかにダークなアクションということで傑作スコアであるダニー・エルフマンバットマンの影響が明らかに見て取れるけれど、ここまでやったことにただただ驚くばかりだ。日本のゲームやアニメのオケのサウンドと言えばよく言うと軽やか、悪く言うとスカスカな音だったわけだけど、今作では驚くほど重厚なサウンドが展開されている。Fight Tune "Arms Of Shinra" なんかのストリングスの小刻みな動きや不協和音の出し方とかいやーびっくりだよ。すげーよくやった。

思えば、Mr.インクレディブルマイケル・ジアッチーノMedal of honorなどを担当していたゲームの作曲家だった。濱渦は日本のジアッチーノになれるだけの実力はあると思う。あとはわかりやすいメロディを作れるようになれるとよいね。

ついでに、FFⅦAdvent Childrenの音楽も聴いたのだけれど、これはもう笑うしかなかった。わかったよこれがやりたかったのね。片翼の天使のオケ版なんかはオケ自体も貧弱だし、ただうるさいだけの曲だ。これなら映像を邪魔して終わったことだろう。映像音楽なんてのはこんなんじゃいけない。よっぽど濱渦の方が映像的な音楽だ。


これからも濱渦にはがんばってもらいたい。チャンスさえあればもっと伸びる作曲家であると個人的には思う。